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信州かくれ里 伊那山荘

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2011年 06月 17日

奥山の危機

深刻な鹿の食害
「山の岩肌に緑のペンキ」と見た目だけの緑化を揶揄するニュースが新聞に出ていました。ありそうな事と記事に目をやると、なんと現場が稲のふるさととも言われる中国雲南省です。稲は水が命、その水を安定供給してくれる森林を稲作の民は大切にするのですが、どうしたことでしょうか。
稲作民と違って麦作牧畜の民は緑を破壊しながら文明を発展させて、世界中に広がりました。今でも砂漠が広がる主たる原因は、緑を根こそぎ食べるヤギやヒツジ。人と家畜の多い中国では、ゴビ砂漠が北京へ二四〇キロメートルに迫って来ています。
 砂漠化の原因であるヤギとヒツジの役回りを丹沢では鹿が演じています。草を剥ぎ取るように食べ尽くし、木で角を研ぎ、食料にありつけなければ木の皮まで食んでいるようです。
その結果、丹沢は下草がない、あっても鹿が食べない毒を持った草しか生えない山になってしまいました。
雨水は、普通の森であれば、まずは木の枝に遮られ、そして草の上に幾重にも敷き詰められた落ち葉に吸い込まれ、やがて土の中に染み込んで行きます。いったん 土の中に入った水は、長い時間をかけて川に流れ込みます。山林土壌が上手に水量を平準化して川にはきだしているのです。
雨水にとっては、木がない、下草がない裸の山肌を崩す事など砂山に、じょうろで水を撒くようなもの、あっと間に土砂を流し去り、そして一気に川に押し出します。結果が豪雨災害です。
鹿が増えすぎました。雪が降り積もったころは餌不足で、大量に増えることはありませんでした。しかし温暖化が進み、厳しい冬は無く、天敵である狩猟者は年老いてしまいました。もっと以前の天敵であるオオカミは姿を消しています。
あまりの酷さに神奈川県が、植生の劣化が激しい地域で銃による鹿の数の調整を始めました。ところが相手はすばしこく、土地勘があって、なかなか上手くはいかないようです。人間の傲慢さが感じられますが、放置すれば丹沢が禿山にされかねません。
以前なら「まさか」と笑った「オオカミを放て」と言う意見も暴論とは言えなくなりました。それほど丹沢の生態系の破壊者、かわいい顔した鹿の害は深刻です。

by okasusumu | 2011-06-17 17:32 | 里山逍遥


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