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信州かくれ里 伊那山荘

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2011年 06月 08日

棚田の復元〈9〉

普通である大切さ
 6月の始めの日曜日、復元した棚田での田植えの日です。
 田植えの模様はテレビで中継されることになっています。筋書きは旅人が棚田を訪れて、田植えを体験するというもの、旅人は「西部警察」や「大都会」で売り出 した苅谷俊介さんです。タレントのほかにアマチュア考古学者としての顔がある人です。テレビで、「地域の人と都市住民との交流により、荒れた里山や耕作放棄された棚田が蘇った」と全国放映される事で、理解者や同調者が増えるかもしれません。
 田植え前の田んぼで、子供たちが泥を跳ね飛ばしながら、生物を追い回していました。父親は「テレビゲームしか出来ない子だと思っていた」と泥まみれの子を注意することなく見守っています。
 子供たちが捕まえた生物は、ヤゴ、サワガニ、オタマジャクシ。友だちが捕まえたタイコウチに始めは恐る恐る触れていた子が自分も負けまいと探し始めます。
 ホトケドジョウや赤腹のイモリがペットボトルに泳いでいるのを見た父親は、「おいおい、ホトケドジョウは絶滅危惧種だぞ」と言いつつ「ホトケドジョウがいるのならゲンゴロウやタガメがいるかもしれない」と環境に感心します。
 親を喜ばせた子供は嬉々として「カメなんか、いないよ」と軽蔑の眼差しを送って、何か言いたそうな父親を無視してまた田んぼの中に入って行ってしまいました。
 昨年、東海大学の北野 忠先生にお願いして生物調査をしていただきまし た。その報告書に「ここには特別に珍しい生物がいるわけではないが、里山の普通の生物が今なお普通に生息している」とあります。「普通」が強調されるのは、他が変わって「普通」でなくなったからです。ここには普通にいるホトケドジョウが絶滅危惧種で珍しくなってしまったのでは、悲しくなってしまいます。   里山や田んぼに普通にいた生物が、今も普通に残っていることが、神奈川あたりでは珍しいのだそうです。
 田植えにはおよそ六十人の会員が集まり旅人の苅谷さんと一緒に田に入りました。参加者の多さは貴重です。汗をかく前に田植えは終ってしまいました。

by okasusumu | 2011-06-08 10:43 | 里山逍遥


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