信州かくれ里 伊那山荘

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2013年 04月 20日

山荘の草花(4月16日)

しだれ桜 高遠の桜が葉桜になった今週になってようやく咲き始めた。
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水仙
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花もも  あと数年で白ピンクの咲分けのこの花に山荘はおおわれる
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ヒヤシンス
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ムスカリ
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ゆすら梅
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レンギョウ
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山荘 南西側の土手に花ももと雪柳、水仙。半月前は福寿草でおおわれた。手前の枯枝はレンギョウ、鹿に丸坊主にされた。
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by okasusumu | 2013-04-20 10:22 | 山荘周辺の草花そして虫たち
2013年 04月 02日

亡霊とおっぱい

珍しく電話が鳴りました。
「ちょっと来てくれない」
美照尼さんです。いつもでしたら、噂話を持って来ては、縁側に腰を下ろし長話をして帰るのに、今日は違いました。
「なんだべか」
首をかしげながら、爺は業務用冷凍コロッケを持って美照尼さんの庵に出かけました。もらい物ですが、油で揚げる料理は苦手です。お土産にちょうど良い物がありました。
庵に村の総代さんと隣組長さんがかしこまって座っていました。庵で顔を合わせるのは初めてです。
二人の話は、村はずれに出た化け物に、与一さんが家から追いだされたというものでした。
「へえ、お化けね」
「続きがあるのよ。それを聞いた村の若い衆二人が面白がって、とっちめてやると与一さんの家に出かけたの」
美照尼さんがすでに聞いていた話を、かいつまんで語ります。
「ところが、翌朝帰ってきた二人は腑抜け状態だったの。だらしがねぇと、昨夜とは別の若い衆が三人出かけて行ったんだって」
それが、さっき戻って来た。この三人も腑抜けになっていたと隣組長が話を続けました。
「それがな、 何を言っているのか、さっぱしわかんねぇし、眼も焦点が合っていねえ、昨日の二人なんぞ、昼間は寝たきり、夜になったら何かに憑かれたようにして、出かけると言い出して、家族は困って、大黒柱に縛りつけて置いたらしいずら。村の若い衆五人が腑抜けにされてしまって、みんなで相談して庵主さんにお願えするべぇとなったで」
「ほら、そんなお話があったでしょう。お経を体中に書いて助かった」
美照尼さんは、みなさんは、それを思い出したらしいと言い何故かうつむいた。
「書き忘れた耳を、持って行かれた話かね?じゃあ、まさしく庵主さまの出番だな」
「それがね、私、お化けは苦手なの。だから私に代わって頼まれて、お願い」
若い衆の体にお経を書くだけで、お化けに会うわけじゃなかんべえ、と爺が諭すと
「そうだけど、お化けと聞いただけで手が震えて、お経どころじゃないのよ」
「そんなんで、よくここで一人暮らしができるもんだなや」
「普通、お化けなんか出ないわよ」
「あれ、爺の方はお化けだらけずら。悪い奴はおらんがな」
「それを知っているから頼んでいるの。どうも、そのお化け美人らしいわよ。若い人が腑抜けにされちゃうくらいだから」
「わしだって、腑抜けにされるのはかなわん」
「うぬぼれないでよ。美人のお化けさんは年寄りなんて相手にしないわ」
「相手にされたらどうするんだや。これで結構もてちゃうんだから」
「腑抜けにされれば良いじゃないの、本望でしょう。余命いくばくも無いんだから」
「かなわんな。それで、どうすれば良いんじゃ」
「美人にそそられて心が動いた?」
「そうだ。おめえさんには、間違ってもそそられんがな」
 二人の会話を、笑いながら聞いていた総代さんが口を出した
「確かに、庵主さまが言われるように、与一さんは喧しくて逃げ出したが、腑抜けになっておらん。このお化けは若いもんには、ちょっかい出すが、年寄りは相手にしないようだに」
これは、藪蛇です。
「じゃあ、総代さんが最適だべ」
「わしか、わしはまだ現役だし、嫁も子も孫もおるで、ふぬけは困るんじゃ。礼はたっぷりだすもんで頼むわ」
総代さん、はげ頭をなでながら笑ってごまかしました。
「何が現役なんだべさ」
隣組長も大笑い、あまり緊張感はありません。

その晩、何とかなるべぇ、と爺はヒョウタンを持って与一さんの家に出かけ、酒を飲んでいるうちに寝入ってしまいました。
草木も眠る夜更けのことです。
騒がしい物音に爺は目を覚ましました。ふすまの向う、隣の部屋で宴会やっているのか、飲めや歌へのどんちゃん騒ぎが聞こえてきます。
与一さんは怖くて覗けなかったです。若い衆は二人、三人いるものだから、数の力で怖さを克服して、どんちゃん騒ぎに加わったのでしょう。
さて、どうしたものか、爺は考えました。
どうも人間臭い。人間のお化けは嫌だなと思いつつ、恐る恐るふすまを開けたのでした。
「あれっ、今日は御一人?」
隣の部屋でうら若き、美しい女御衆が五人、おっぱい露わに乱痴気騒ぎをしておりました。みんな美形です。
「あらっ、今日は爺さんよ、つまんない。女子会に爺はいらない。帰れ、帰れ、帰れ」
手をたたいての合唱になってしまいました。みんな酔っています。
このまま帰ったら子供の使いになってしまいます。粘らなければなりません。
「そう言わないで、お酌をいたしますから」
「爺に酌をされたら酒がまずくなる。小松様を連れてきて」
一番年増の亡霊女御が酔っぱらって爺に絡んで来ました。目の前でおっぱいが揺れます。「小松様でございますか」
「そうじゃ、小松少将様を連れてきて、お願い」
女御は甘えるように言いました。
「少将様?」
「知らんのか?この無礼者めが、そこに直れ成敗してくれん」
聞いたことがあります。爺は必死で記憶を辿りました。確か歴史上の人物です。
後白河法皇の祝賀で烏帽子に桜の枝、梅の枝を挿して青海波を舞い、その美しさから桜梅少将と呼ばれた維盛少将? 当時、光源氏の再来と言われた比類ないほどの美しい貴公子が思い浮かびました。
「コレモリ?」
「おのれ、呼び捨てにするとは何事ぞ。許さん」
爺は理解しました。
この女御衆は平維盛の取り巻きの亡霊のようです。暴力的ではありませんが、この色香では若い村人はひとたまりもありません。すぐに骨抜きにされてしまうでしょう。しかし、なぜ、こんな連中がここに棲みついたのかがわかりません。
「維盛さまって、富士川の戦いで、水鳥のはばたく音に、驚いて逃げ帰った平家の総大将ですか?」
爺のこの言葉がよほど気に障ったのか、五人の亡霊が髪を振り乱して、爺にとびかかってきました。亡霊とはいえ、美しく柔らかな女御衆です。爺は鼻の下をいっぱい伸ばしました。
「それにしても美しい人だったようですね」
この言葉に女御衆は、今度は泣き出しました。
「それはそれは、お美しく心憎く、懐かしきさまは、かざしの桜にぞ異ならん」
「もう一つお尋ねいたしますが、皆様方のようにお美しい方々が、なんでまた、こんなあばら屋にお越しになったのですか」
「なに、その方は知らんのか。ここより先、壇ノ浦に住まいしが、こたびの大雪で屋敷が壊されてな」
そこまで聞いて爺は、合点。女御衆に向かって手を広げて言いました。
「それでは、小松少将様にお越しいただきましょう。呪文をかけますので、しばらく、ここにお集まりいただき、お待ちください。楽しゅうございました」
女御衆は首を傾げながら年増の女御を中心にまとまりました。爺の言葉の意味を考えているようです。爺は、
「それでは女御衆の皆さん、ギャーテーギャーテーパラソウギャーテー、ひさごに入れ」
と大声で唱えました。
すると、どうでしょう、あーという声とともに女御衆は消え、静かになりました。

翌朝、与一さんの家を出ると、村中の人が集まって爺を見ています。美照尼さんもほっとした笑顔を見せています。
「何にもなかっただか」
総代さんがと聞きます。爺は答えました。
「浦の小松さんの墓が雪で壊れてしまっただに。直せば若い衆の骨抜きも治ると」
また、雪が降り始めました。道端に子供たちが作った雪ダルマがありました。そのダルマに誰がいたずらしたのか、ナンテンの赤い実を先っちょに置いた、おっぱいが付いていました。
亡霊のおっぱいもあり隠れ里
                          (終わり)

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by okasusumu | 2013-04-02 15:58
2013年 04月 02日

貧乏神と雪女

漬物のお裾分けを持って来た美照尼さんが、爺の家の縁側に座りこみ、村で仕入れてきた噂話を身振り手振りよく語り始めました。
「金吾さんは正直者で働き者、男前で、それでいて両親の資産を、そっくり引き継いだばかりの、お金持ちの独り者。だから村中の娘っ子がお熱を上げているのに相手にしないで、隣村の神社の村祭りで知り合った娘にほれ込んで嫁にもらったの。貧乏な家に育ったようだけど、それは清楚で優しく、近在では評判の美人だったわ。富も名声もそして美女まで得た金吾さんは、もう有頂天で鼻高々よ。
ところが、どうしたわけか、その嫁が病で寝込み、嵐で田畑が流される不幸続きで収入が無くなってしまったんだって。それでも、今までの蓄えで、何とかしのいで来たけれど、それも無くなり、とうとう家、屋敷を切り売りしたの。それでも良くならないで、今や、無一文、途方に暮れているんだって。まるで貧乏神に取り憑かれたみたい」
村中の噂になっているようだ。
「貧乏神ならここにもおるでよ」
美照尼さんはクワバラクワバラと笑いながら帰っていきました。

爺は漬物を頬張りながら、裏の山神様を訪ねました。神のことは神様に聞くのがいちばんです。
今日もまた、石の山神様は雪に埋もれていました。雪をどけながら、
「なあ、貧乏神という神さんは、本当におるんかい?」
と訊きました。
「そりゃあおるさ。死神、疫病神を同伴する厄介なのもおる。神仲間では嫌われ者じゃ」
爺は金吾さんは知りませんが、嫁さんがかわいそうでなりません。きっと、両親の助けになると信じて資産家に嫁入りしたのでしょう。歯を食いしばり今を我慢している嫁さんを想うと泣けてきます。
爺の心を読んだ山神様は言いました。
「爺が、ここに越して来たとき、蔵に狐の婆さんが棲んでおって、亡くなるときお前、手厚く葬っておったな」
「ああ、嫁の白狐と上手くいかないで家を出て、そこの蔵に棲んでおった。最後を看取ったのは爺だった。今際に何かを言いながら、ヒョウタンをくれた」
「あれは、力のあるヒョウタンだ」
「ヒョウタンからいろいろな物が出て、長者になる昔話? まさか、あのヒョウタンが?」
「出て来るのではなくて、吸い込むのじゃよ。使い方を聞いておらんのか。あれはな、ギャーテーギャーテーパラソウギャウテー、ひさごに入れと唱えると何でも吸い込むのじゃよ」
「出して長者なら、吸って貧乏か」
「バカタレが、助けたかったら頭を使え」

爺は、美照尼さんに金吾さんの家に連れていってもらいました。爺の知る金吾さんの家は大きな豪農の屋敷でしたが、訪ねたのは裏の納屋の方でした。
暗い土間に、直接むしろが敷かれ、そこに嫁さんが横になって、目を閉じています。
「こんな女を嫁にもらったばっかりに…」
酷い言葉をはく金吾さんを美照尼さんが叱りましたが、聞く耳をもたないでドブロクを食らい続けます。
突然、爺が、「やい、貧乏神おるんかね」と叫びました。
金吾さんはキョトンとしています。嫁さんの目から涙が溢れ出ました。自分が言われたと思ったようです。ずっと、あびせられてきた言葉だったのです。
爺は唱えました。まだ試していませんが、いちかばちです。
「貧乏神、ギャーテーギャーテーパラソウギャウテー、ひさごに入れ」
大声でした。静まった納屋の中、ドサッと貧乏神がヒョウタンに入った音がしました。爺はあわてて、ふたを閉めました。
一瞬の間があり、なんとまあ、臥せっていた嫁さんが立ち上がり働き始めたのです。生き生きとした嫁さんの顔は実に美しく、金吾さんがほれたのも無理ありません。
どうやら、これで、金吾さんも立ち直れそうですが、酷い言葉を浴びせた手前、もう嫁さんには頭が上がらないはずです。
さて、貧乏神を貰い受けてしまったのですから、困ったのは爺です。ふたを開けたら貧乏神に取り憑かれてしまいます。貧乏神の入ったヒョウタンを、桃の木の枝にぶら下げて、一晩考えることにしました。

翌日、美照尼さんからもらった漬物を、石の山神様に備えながら、雪女に合わせて欲しいと、お願いしました。
「今年のあの娘は、なぜか忙しがっておる。まあ、わしが頼めば来てくれるだろう。あしたはドラ焼きを備えろうよ、それが条件だ」
爺が了解すると、青空が一点にわかに掻き曇り、雪が降り始め一瞬であたりを雪野原に変えてしまいました。そして、豪華絢爛たる衣装の美しい顔立ちをした雪女が現れました。

「何だ、爺さんかつまらない。山神もなんと、つまらない人間の頼みを聞くものよ」
雪女がヒヤッとする冷たい蔑みの目で、見下ろしたのを逃さず、爺はヒョウタンのふたを開けました。
するとどうでしょう。雪女の衣装が見る見るうちに廃れ、そして雪が小降りになりました。雪女も恥ずかしがって、山の上へと去って行きました。

貧乏神が雪女に取りついてしまったのです。
これで、今年の雪の峠は越えたかもしれません。
「爺よ、今年の夏、水不足になったらどうするつもりだ」
山神様が心配しました。
「しかし、まあ、今年は十分すぎるほど降ったから、良いとするか。よくやった兄弟」
爺は山神様から褒められ、ヒョウタンをなでなでしながら帰っていきました。
                         (終わり)

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by okasusumu | 2013-04-02 13:45
2013年 04月 02日

財宝を掘り当てた人


五日前の真夜中のこと、足元に立つ観音様に気がつき、爺は目を覚ましました。
観音様はこうおっしゃいます。
「爺よ、町に行って駅前にある旅館の前で待ちなさい。爺の夢が向こうからやってきます」
わくわくする言葉です。
その日は朝から雪が降り続き、止みそうにありません。
「これでは、町に出かけられんな。観音様の言いつけだが、明日にしよう」

その晩、爺が眠りに落ちると再び観音様が現れ、昨夜と同じことをおっしゃいます。
「爺よ、町に行って駅前にある旅館の前で待ちなさい。爺の夢が向こうからやってきます」
その日は良く晴れていました。ところが道は雪解けでぬかるんで、まるで田んぼのようです。
「これでは町まで行くのは難儀じゃな。観音様の言いつけだが、明日にしよう」
爺は、その晩も観音様の夢を見ました。観音様に同じことを言われました。

観音様のお言葉ですが、三度も言われると、ありがたみが薄れます。しょせん夢まぼろしの夢なのか、それともお告げなのか、悩んだ爺は、裏山の山神様に相談をしました。
「あんたはアホか。観音様のことをライバルの山神に聞くな。バカたれが」
爺は、山神様の不機嫌さを、「やめとけ」と勝手に思い込み、その日も町には出かけませんでした。
午後のことです。光が雪の上ではねています。ふと、湖の方を見ると、美照尼さんの庵の手前、春になればルピナスの咲く丘で一人の男が穴を掘っています。見知らぬ人です。
「何をしてるだに」
「穴を掘ってるだに」
「それは見ればわかるだに。なんで穴なんど」
「それが…」
男は町からやって来ていました。昨夜のこと、観音様が足元に立って、長谷隠れ里の春になればルピナスが咲く丘を掘れば、幸運が舞い込むと、告げられたのだそうです。似た話に爺は「あんれまあ」とぎくりとしました。どうやら、ここがお告げの地であるのは間違いないようですが、口にはしませんでした。
掘り進めるうちに、シャベルが箱のようなものに当たりました。そして男が掘り出した箱から金銀財宝がこぼれ落ちました。まるで「花咲爺さん」のここ掘れワンワンです。正夢だったのです。
その夜、爺は観音様を待ちました。でも夜明けになっても枕元に観音様が現れることはありませんでした。興奮して眠れません。寝てないのですから夢を見ることはありません。
その日は雪になりました。爺は観音様の言葉を思い出し、雪の中、駅前に行き旅館の前に立ち、待ちました。日が落ち、暗くなっても誰もやってきません。町の人たちはうろんな目で爺を見やって、足早に遠ざかっていきます。
大損をした気分の爺は、山神様に相談しました。この神様、悩める人を突き放します。
「そう落ち込みなさんな。あんたは危険をかえりみず、夢を追う男じゃないんだよ。いい爺だが金は寄ってこん。良いではないか」
頬に冷たいものが触れました。爺は空を見上げ「また降り出したか、ほんじゃまたな」と山神様の雪囲いをしっかり直し、家に帰って行きました。
                              (おわり)

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by okasusumu | 2013-04-02 13:40