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2011年 08月 23日

コンクリートの畔

コンクリート畦のこと
 NHKテレビ「わが町の棚田を守れ」の放映後のことです。視聴者からNHKに電話が入り、そしてその内容が発言者に告げられました。内容は「田んぼの畦がコンクリート化され生物が棲みづらくなった」と言う発言に対して、コンクリート化された畦など見たこともない、どこにあるのかと言うものでした。問われて田んぼの光景を思い浮かべてみましたが、稲作地域の田んぼはすべてコンクリートに仕切られていますので「どこと言われても、どこもかしこも」と答えざるを得ません。その答えではNHKは納得しません。「具体的にはどこですか」と突っ込んで来ます。そこまで言われると自信がなくなります。
 同じ週の土曜日、相模原の相模川の水を引く田んぼの田植えに手伝いに出かけました。以前、我が棚田の作業に手伝いに来てくれた人たちの田植えです。手伝いに対する返礼は手伝いです。この義理が果たせないようではNPOの環境活動などやめたほうが良いと思っておりますので、田植えのシーズンはあちこちに出かけることになります。そこで自信を取り戻しました。その相模原の田んぼも次の日に行った酒匂川から水を引く山北の田も、思い起こせば不耕起栽培を学んだ利根川から水を引く佐原の広大な水田もコンクリートで仕切りされ整備されていました。田植え機などの機械をコンクリートに接触させないために境界に土が盛り上がり自然の畦のように草が生えている部分がありますがわずかなものです。
 考えてみれば、自然の畦だとすれば、水争いだけでなく境界争いも絶えないはずです。維持作業も大変で、共同作業も常に行わなければなりません。地域全体のことですから個人ではどうにもならないという点もあるはずです。水田は多面的機能を持つと言いながら、コンクリートで仕切れば、区画整理ができて、作付けの有効面積も広がると農業関係者は考えますのでコンクリート畦は広がる一方です。
 NHKの間違い探しを趣味とする人かどうかは分かりませんが、連絡を入れた人の地方には、あるいはコンクリートの畦はないのかもしれません。しかし、それは数少ない地域、羨ましい地域です。残念ながら、美しい畦が残っているのは、山田の小規模の田んぼしかありません。愚かなことにコンクリート畦は観光化した棚田にまで及ぼうとしているようです。
 ともあれ、コンクリートの畦には美が感じられません。棚田が美しいのは、自然と人とが織り成したものだから、人の仕事が見えるから、物語が読めるからです。
今回のテレビ取材の前に草刈りをしたことに、映像でしか物を考えないNHKの人は違和感を覚えたようです。私たちは放置された自然が見苦しいと感じたからこその作業でした。これは、映像でしか自然を見ない人たちと、常に自然の中にいて、放置された自然に押し寄せる自然の脅威を感じる私たちの違いかもしれません。

by okasusumu | 2011-08-23 09:24 | 里山逍遥


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