信州かくれ里 伊那山荘

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2011年 07月 19日

蛍とぶ はかなき光に我が憂い見ん

 山あいの棚田に弱き月明かり早苗さ揺らぐ水面に揺れる

 上弦の月の光の優しかる星のまたたき涼やかにみゆ


酒にしびれる体に、吹く風が心地よい。わさび田の清流に冷やされた原酒「笹の露」が旨く自分の適量を見失ってしまったようだ。誰かに見られている気がして、振り向くと棚田の横の林の中に白いものがぼんやり佇み、揺らぎすさんだ心を見透かすように、こちらを見ている。山百合だった。
 
 闇の中妖しき白き山百合に見つめられており揺らぐ心を

この花には静けさの中に気品と優しさがある。漲る野性味にはおかし難い威が備わっている。
 喧しい田の蛙が突然泣き止んだ。静けさがやって来た。

  いずこかにマエストロいて蛙突然鳴きやみぬ静けさが遅い来る
恐ろしいほどの静寂さである。闇はさらに深まってゆく。そして、蛍がポッと光を放った。
  宙を飛ぶ幽かな光に甦るかの夏の日の懐かしきかな
懐かしい光に遠い子供の頃の記憶が蘇った。ときめかせる光である。しかし、どうしてかその光は侘しく寂しい。美は見る者の心のうちにある。酔いどれ男にはもうホタルの光に美しさを感ずることができないのかもしれない。我が憂いは我のものなるが、蛍の光はさびしい。
  ふらふらとふらつきながら蛍とぶはかなき光に我が憂い見ん
どんなに頑張っても、あの幽かな光に闇を照らす力などありはしない。はかない努力が寂しく滑稽にうつる。南の島に蛍の木があって、その木が電飾に輝くクリスマスツリーのように闇を照らすのをテレビのドキュメンタリー番組で見た。画面で見る限りその光に寂しさはない。一瞬を写し出す画面に滅びがないからだろう。
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by okasusumu | 2011-07-19 16:07 | 長谷の自然と歴史


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